メッシとAmazon (前編)

世間がサッカーワールドカップにもりあがっていた頃、香港MBAの仲間で飲み会があった。


幹事のHさんは、プレイヤーとしてもコーチとしてもサッカーの経験があるという。日本戦について初心者にもわかりやすくポイントを解説してくれた。指導者視点だと個々人の動きだけではなく、チーム全体の動き方にも注目するそうだ。

常々思っていたが、その話を聞いて、サッカーのチームプレーというのはすごい、と改めて感じた。個々の選手が自由意志で動いているのにも関わらず、それが群行動となり見事に目的を達成しているからだ*1


複雑系、というのはこういった群行動を説明しようとする学問体系だ。名前とは逆に考え方はシンプルで、単純な規則に支えられた個が相互に作用することで複雑な群行動を発現させるというもの。


有名な例としては、群鳥の風景がある。



Video example of Boids in action - YouTube

一羽一羽の鳥にはとても単純な規則(例 前の鳥と近づいたらちょっと離れる)だけど、それをたくさん合わせてみると、本物の鳥の動きが再現できる。


「マルチエージェントシステム」というのはこのような、計算機上で複雑系を再現する手法である。サッカーを例にすると、個々の選手をエージェントとしてその動作(ルール)をプログラミングする。その後、サッカーフィールドで複数のエージェントを独立して動作させ、その挙動を観察する。


エージェントに与えるルールは、例えば「敵プレーヤが近づいてきたら一番近くの仲間にパスを出す」、といった具合だ。ところが、実際にこうしたルールを与えた選手をコンピュータ上で動作させてみると、最初は本当にShabbyなプレーとなる。


そうすると、「敵が3人以上くるまではパスしない」、とか「ボールが全くない空白地帯で誰もいなかったらそこに移動する」、といったやや込み入ったルールを導入してみる。そうすると、さっきよりはもう少しまともなサッカーとなる。


このように、こうすればよさそうという人間が感性(思いつき)でつくるルールのことをヒューリスティックと呼ぶ。そして、多くの場合洗練されたヒューリスティックは非常によく機能する*2


ただし、中にはこのルールを自律的に習得させたいと考える人がいる。計算機に勝手に学習させて最適なルールを発見できたら・・・。そう、このルールをどうやって手に入れるか、というのが面白いポイントなのだ。


次回は機械学習や進化型計算とよばれる領域を紹介したい。

*1:逆にチームプレーの失敗を見ると、やはり人間でも難しいのかと思い複雑な気持ちになる

*2:データが揃わない状況で有能なリーダがカンと経験で下す決定がしばしば成功するというのに似てるかもしれない