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エンジニアはMBAに行くべきか?

MBA仲間の一人からTwitterで面白い指摘を受けた。曰く「エンジニアはMBAで得るものが最も多いのではないか?」と。ふーん、なるほど。ちょっとこれはネタになりそうだな〜、ということで、今回はこの件について考えてみたいと思う。

エンジニアだけが得られるものってそんなにない

ファイナンスや会計、マーケティングといったハードスキルについては、畑違いでそもそも知らない、という観点から、エンジニアが得られる物はビジネス領域出身者よりは多いと思う。

例えば前職金融とかコンサルの人はクラスで習うような知識については既に知っていて、そこで新しいものを学ぶということはあんまりないだろう。一方エンジニアは知識のオーバーラップ無しに色々学ぶことができる。

とはいえ、ビジネス・スクールでも統計学やオペレーション・マネジメント、ITといった科目もあり、これらの知識面についてはエンジニアは学ぶ事は少ない。

また、クラスは、大抵の場合、半分ぐらいの時間はケースディスカッションとか事例紹介、ゲストスピーカーによる講話などに費やされる。この部分はバックグラウンドによらず、ほぼみんなに価値があるパートでといえそうだ。

更にいえば、選択科目などでは、そこそこ専門的な事を扱っているので、プログラムが進行するにしたがって、出身業界によらず得られるものは増えていくと思う。

また、知識面での収穫というのは、MBA生活全体で言えば、数ある要素のほんの一部分に過ぎないというのが、自分の認識である。ソフトスキル(多国籍環境での経験とか、異なるバックグラウンドの発想、リーダーシップ、プレゼン特訓)や、友人関係、アラムナイや有名人とのネットワーク、学生身分での企業訪問などなど、みんなが利点を享受できることは知識以外にも色々ある。

エンジニア以外の人が得られるものはある

何げにホトンドの人にとってこれが最も大きなMBAの価値だと思うんだけど、次のキャリアへの切符という価値がある。過去に何度か言っているかもだけど、就職予備校としてのMBAである*1。プライベートバンカーがトレーダーになったり、コンサル出身の人がベンチャーキャピタルに移ったり。職種を変えたり、同じ職種でもより高給なポジションを目指したり。

ところが、これはエンジニアには当てはまらないことが多い。文学部卒の人が、エンジニアリングスクールの院を修了してITで職を得る、というのは全然普通だけど、エンジニアがMBAを出て、いわゆるビジネスフィールドにキャリアチェンジすることは簡単ではない。もちろん絶対無理では無いが、相対的には難しい。

更に悪いことには、周りでもそれを当然だと思っている人がとても多い。自分もMBA中、唐突に「今後の日本のITは君にかかっている」なんて言われたこともある。もちろん、これを言った人は褒め言葉のつもりなんだろうけど。残念ながら、多くの人にとっては、エンジニアというのはビジネス・スクールでMBAを取ったとしても彼らと同じフィールドには立つことのない存在として認知されているのである。

まとめ

まとめると、エンジニアがMBAで得られるものが一番多い、というのはあんまり真実じゃない気がする。極端な例だが、MBAの授業で財務諸表が読めるようになりましたという人と、そんなの最初から知ってるけど年収が500万円アップしました、という人でどちらが得られるものが多いか、というのは微妙な議論ではないだろうか*2。現実的にMBAに来るエンジニアが少ないという事実が色々と物語っていると思う。

で、冒頭の、エンジニアはMBAに行くべきか?については、「よくわからない」が答えとなる。自分は既に来てしまったので、それをサンクコストとして認識したくないバイアスがかかっていて「行ったほうがいいんじゃない?」っていう気持ちが強いが、人それぞれの事情と価値観、キャリア戦略があるので、個々人で判断するしかない、というのが無難な回答だと思う。

*1:有名企業はMBA採用という枠があって、MBAを出ることはそこに応募する権利が得られる、と解釈することもできる

*2:最近はMBA取得者がインフレ気味であり、所得を押し上げる力が減っているというのはあちこちで指摘されている事ではあるけれど