リクルートトークに参加できるのは想像以上の特権かもしれない

ビジネススクールでは色々な出会いの場、ネットワークの機会がある。リクルートトークもその一つだ。自分は留学後は自社に戻るので、基本的にこの手の説明会はずっと敬遠していた。

だが、今回は、前から気になっていた企業がやってくるということで(企業自身やその中国ビジネス、採用側の事情を見てみたいと思い)とある多国籍企業(以下便宜上A社とする)の説明会に参加してみた。

今回は、そのリクルートトークで印象に残ったことを備忘録としてまとめてみたい*1

中間管理職が欲しい

多国籍企業が本社外の地域、例えば中国に進出するとき、どの程度そのグローバル戦略を維持し、どの程度中国にカスタマイズするのか、というのはホトンド全ての会社が頭を悩ます難しい問題である。

実際のところ、様々な要因(例:業種、顧客の嗜好、文化的な類似度、体制etc…)に応じてその答えも色々で黄金律のようなものは残念ながらないというのが現状だ。

A社は、リテールビジネスも手がけており、その部分は多くを現地スタッフ(中国人)にまかせている。また、それは既にそれなりの規模のビジネスであり、さらに急成長している。そのため、内部には階層を伴う組織構造が存在している。そんな状況の中、上位の意思を理解して実現する、同時に、下位のマネジメントを行う人材、つまり中間管理職が不足してきているようだ。トップマネジメントは多国籍企業のそれとして、パラシュートで本社からやってくるし、実業務は中国の労働力を期待できるので確保には困らないからだ。

そこで、ここにハマる人材を探すことが急務となり、中国のビジネススクールに声をかけはじめたというのが彼らのモチベーションのようだ。MBAを積極的に採用するためのプログラム*2を用意し、そのパッケージの説明に中国のトップスクールを行脚しているらしい*3

こういう背景から、応募者はどのポジションでもマンダリンが話せることが求められる。もっと言えば、中国人であることが最も望ましいとA社は考えていると思う。一般論としてダイバシティは大事なんだけど、基本的にMBAは英語で欧米の教育を受けていてトップマネジメントとは共通語があるし、現地採用の中間管理職をどこまで本気で幹部登用するかは疑問だからだ。また、パラシュート部隊の観点は、現場をいかに効率的にまわして売上を計上するかが彼らの評価だろうから、やはり中間管理職に求めるのは、中国の文化や風習を共有して、コンフリクトなく現場業務の効率をあげるスキル、というのが本音だろう。

こういった背景もあり、説明会の現場では、A社の担当がマンダリンの必要性について明確に言及した時点で、欧米人とインド人からため息が漏れ、段々と場の空気が変わっていったのだった。

転んでもタダでは起きない

ということで、微妙な空気となったところでQ&Aとなった訳だが、業務やポジション、待遇の質問はあんまりなく、話題の中心は
「中国市場はライバルも多いけど、貴社の戦略は?」
「貴社はBI、つまりBig Dataの活用をどう考えてるの?」
「中国でのオペレーションの困難をどう切り抜けるつもり?」
といった、ビジネスケースを読んだあとのディスカッションのような質問だった。

というのも、この段階で、就職活動というのが主目的ではなくなり、この有名企業A社の内側の様子を中の人の言葉で聞きたい、という方向に関心が移っていたからである。

「お金払って受けてる授業でもないんだから、そんなことリクルートトークの場で聞くなよー」という気持ちの反面、とはいえ「向こうもビジネススクールに来るってことは、そういう事聞かれるのは想定済みなんだろうから、ま、いっか*4」というようにも思え、自分は、その場はそっと見守ることにした。

ちょっとした発見

自分的な興味の観点から、いくつか面白いことが分かったので、ちょっとここに記しておこうと思う。

ビジネス戦略だけを担当する部門、役職はない

まず、戦略を決めるやり方について。あれだけコンサルだの(欧米の)MBAだのを採用しまくっていのだから、立派な経営企画部みたいなところがあって、ビジネス戦略を立案しているとおもいきや、A社の中にはそういった組織はないらしい。あるのは、CEOから出された紙ペラ一枚(方針が記してある)で、それを元に個々人がその業務範囲の中で最適と思うことを考えて実践しているそうだ。

まぁ、役職による階層組織があるので、上位階層の人たちが実質的にそういう役割を担っているんだろうけど、わりかしボトムアップなアプローチでビジネスストラテジーが定まっているらしい、というのは興味深かった。以前から個人的に、A社の戦略は洗練されていて隙がない、すごい、と思っていたのだが、まさかこういう方法を採用しているとは思わなかった。

オフショア開発のメリットは享受している

A社はテクノロジにも積極的に投資している。既に北京に研究開発の部隊を囲っており、グローバルのテクノロジ開発に従事しているそうだ。つまり、中国の一流大学を卒業したエリートを(おそらく)中国スタンダードな賃金で雇用している。テクノロジは表面的な部分(インタフェース)は言語が重要であるが、本質的な部分(ロジックやプログラミング言語など)については母国語は関係ないので、この部分をスマートで優秀な中国人に依頼しているというのは上手な方法である。

あと、A社にはリテール以外のビジネスもあって、中国メインランドでのローンチについては結構気を揉んでいる人が多いのだけど、現状だとそれを担う人材の募集や組織がないようなので、もう暫くはリテール業を中心に据えていくように感じた。

まとめ

いままで、ずっとリクルートトークを敬遠していたんだけど*5、やっぱり勿体なかったかなー、と思う。もちろん自分は自社に戻るので就職は関係ないんだけど、企業の内側を覗いてみる絶好のチャンス、MBA学生にとってはかなりの特権だったんだと今更ながら気づいたからだ。

*1:このエントリには事実を憶測が入り交じっているの注意してほしい

*2:数年間中国内の部署をローテーションした後にどこかのマネージャポジションにつくらしい。あと、一応その時点で中国以外の地域への道も閉ざしてはいないとのこと

*3:とはいえ、雰囲気的に香港はオマケっぽいような扱いだったような気もする

*4:実際、A社の担当者は一般論を言うのみで、のらりくらりと面倒な質問はかわしていた

*5:グループワークを優先させたり、課題をやるために時間を作るという意味もあった