「財布がない!」と気づいたその時に

前回に引き続き、ヨーロッパ旅行時のトラブルのはなし。今回は外部要因ではなく、自分に隙があったため引き起こされたものを振り返ろうと思う。


ローマ鉄道事件

ローマでは空港から市街までは列車に乗って30分ぐらいで移動できる、というのは事前に調べてあった。LCCでローマの空港に到着して鉄道乗り場に移動したところ、中国人のグループに声をかけられた。「パッケージツアーでローマに来ていて、市内までの鉄道のチケットを持っている。ただ、自分たちはレンタカーで市内に行くことにしたので、このチケットを買わないか?」。妻は猛烈に反対したんだけど、安かったし、チケットを見ても確かに旅行代理店で発行されたもの(なので払い戻しできない)、悪い人にも見えなかったし、こっちは2人なのに3枚のチケットを譲るといっていたので、まー、ウソではないだろうと思い、買ってみることにした。

レオナルドエクスプレス、とかそんな名前の列車に乗り込む。出発してほどなく、車掌が検札にやってくる。妻のチケットを見てハンコを押す。その後自分のチケットを確認したとき、車掌が何かに気づき、これは違うチケットだと言いだした。聞いてみると、空港から市内に行く鉄道は1等と2等があって、この鉄道は1等、君のチケットは2等、とのこと。結局その場で1等のチケットを(妻の分含めて)2枚買い直すことになった*1。件の列車には中国人グループの手引きで乗ったのだが、実は別のプラットフォームから2等に乗るのが正解だったのである。彼らもローマに不慣れてでそういうことになったのか、最初から騙すつもりだったのか、というのはよく分からないが、結果として無駄な出費となってしまったのだった。

やはり、この手の状況では妻の嗅覚*2を信じるべきだった、というのが教訓である。

「財布がない!」と気づいたその時に

こっちはより深刻なケース。実はドイツのミュンヘンで一度財布を失くしたことがある。

観光の後、地下鉄でホテルに戻る際、お腹が痛くなって、駅の有料トイレに駆け込んだ時のこと。あろうことか、そのトイレに財布を置き忘れてしまったのである。有料トイレということで、普段はホトンド出さない財布からコインを取り出したことで手元に財布があり、それをトイレの個室に置きっぱなしにしてしまったのだ。

10分後ぐらい、ホテルへ向かって歩いている時に、帰りに飲み物でも買おうか、という話をしていて、ちょっと財布からお金を出しておこうかな、と思ってバッグに手を伸ばした時に「はっ!!」と気がついた。スグにダッシュでトイレに戻る。10分の道のりを5分で引き返す。置き忘れてから15分経過...。ヘトヘトになってトイレについて、辺りを確認したところ、自分が使っていた個室には別の人が入っていた。

その人が出るのを待って、中を確認するが、当然のように何もない。ダメ元で出てきた人に「財布見なかったか?」と聞いてみる。「は?」との回答だが、英語が通じてないのか、とぼけているのかよく分からなかったので何度も何度も「財布だよ、財布。この中にあっただろう?」と畳み掛ける。すると「あー、財布か、あった」といって彼はバッグから財布を取って差し出した。

スグに中を確認する。クレジットカードは無事のようだ。現金は…?よく分からん。少ないような気もするがあっているような気もする。「現金を抜いたか?」と聞くが「え?」との返事。そうこうしている間に「警察に言ったほうがいい」とか謎のことを言って彼はそそくさち立ち去ってしまった。本来だったら腕っ節を掴んででもその場にいさせるベキだったんだろうが、こっちは「財布紛失→発見(最悪の事態は回避できて安堵)」「金額確認→よく分からん」「仮に札を盗まれていたとして、それをどうやって証明できる?」といった事が頭の中でグルグルしたパニック状態で、そんな余裕はなかったのだ。

結局、その後、妻にこっぴどく怒られながらホテルに戻った。現金を改めて数えてみる・・・。合計金額は...あってる!。よかったー。財布の紛失に備えてあちこちに現金を分散させてたんだけど、それぞれどれぐらい入れてたか完璧に忘れていたので、部屋に戻るまで合計をチェックできなかったのだ。

クレジットカードの番号を密かに写されているという線も考えたが、現金をとらなかったということで、トイレの彼はそこそこ良い人なんじゃないか(彼も気が高ぶっていて、そこまで頭が回らなかったんじゃないか)、カード止めたらこの先の旅行が少し大変(予備はあったけど)、カードの被害は多分保険でカバーできるだろう、などの考えから性善説を採用して旅を続けた。幸いにしてその後の被害はなかった。

この事件の後から、旅のスタイルをちょっと変えた。財布はかさばって出し入れする時にスキができるので、携帯するのを止めた。代わりに100ユーロぐらいとクレジットカードを直接ポケットの中に入れて過ごした。よりスリに脆弱という見方もあるが、自分にとっては、財布の出し入れに伴うリスクの方が高いと判断してのことだ。

まとめ(警戒と満喫のトレードオフ

この手のトラブルのはなしは、それを警戒しすぎると、行動が過度に硬直化してしまい旅そのものが楽しめなくなる。一方、緩すぎると危険な目にあう可能性もある。どれぐらい現地に習熟しているか、リスク許容度、語学の問題、旅のスタイルetc…に応じて個々人が最適な対策・対応をするっていうのが教科書どおりの一応の解ではある。

スープカレーというのは学生時代を過ごした札幌でラーメンを遥かに凌ぐ熱狂的な人気を誇るB級グルメだ。スープカレーを最も美味しく食べるコツは自分が耐えられる限界ギリギリの辛さのカレーを選ぶこと。辛ければ辛いほど美味しいんだけど、辛すぎると食べられない。そして、何度も食べているウチに段々と辛さの許容度が上がっていく。

旅の危機管理というのもこれに通ずる気がする。自分の経験やスキル、状況に合わせて、冒険できるギリギリの線を攻めるのが最も楽しめる旅を演出するコツなんだろうと思う。旅好きの人が、ハワイ→アジア→アメリカ→ヨーロッパ→アフリカっていう感じで自然にステップアップしていくように。



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ヨーロッパで小さな悪から身を守る

*1:空港からTermini駅までノンストップで、その列車には2等席は存在しない

*2:ギャグだと思うが、詐欺の先進地域上海で育っているためホトンドの詐欺の手口を心得ている、とのこと