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Amazon EC2 は Innovative か?

今、Technology and Innovation Managementという授業を受けているのだが、これが結構面白い。今まで2回授業があったんだけど、Innovationの分類軸、エコシステムとプラットフォームの関係、Winnter-take-all-marketといった概念やフレームワークを扱った。

ということで、今日のエントリでは、それらのフレームワークを使って、Amazon EC2というプラットフォームを分析するとどうなるか、というのをお届けしたい。*1

クラウドのおさらい

本題に入る前にちょっとおさらい。クラウドってその提供形態で分類すると、SaaS、PaaS、そしてIaaSと呼ばれるカテゴリに分類される。EC2が属するのはIaaS。要するに、コンピュータリソースをわりと生(なま)の形で、Virtual Machineとして時間貸しするサービスを提供している。

ちなみに、クラウドの特徴として、伸縮(仮想サーバを増やしたり減らしたり)自在、使った分だけ課金というのがあるのだが、これを実現するには裏側でそれ相応の数のサーバだったり、ストレージだったりネットワーク機器を用意しておく必要がある*2。コンピュータ機器というのは"規模の経済"で価格がすごーく安くなる代表選手だったりする。ということで、このマーケットに参入する場合、資本があればあるほど有利となり、この大きな資本の必要性が参入障壁となっている。

IaaSのマーケットは、技術的な理由からプラットフォームの乗り換えが難しく、参加者が多ければ多いほど魅力的になるという特徴を備えているため、Winer-take-all-market、つまり勝者総取りな市場と分類される。Amazonは2006年にこのマーケットに参入した古株で、いわゆる first mover advantageも活かしてこの市場を専有しつつある。

このマーケットの主要なプレイヤーには、Rackspace、Google、そしてMicrosoftなどがある。

Amazon EC2のプラットフォームとエコシステム

ばっくり図解するとこんな感じになる。プラットフォーム上にユーザとパートナーが存在する、two-sided-platformである。

”チャリンチャリン”いうプラットフォーム作りたい場合、2つ以上の参加者が共存し、お互いに生の連鎖を生むようなエコシステムを構築することが、その鍵となる。それで、こういうプラットフォームを作る時の共通の課題がいくつかある。

Catch-22

要するに卵が先か鶏が先かという課題。EC2の場合だと、ユーザを増やすには魅力的なパートナー、例えばOracleとかを増やす必要があるんだけど、逆にOracleをプラットフォームに呼び込むためには大きなユーザベースが必要ということ。

で、Amazonがこれにどうやって対応したかというと、

  1. 価格を思いっきり下げた(従来の物理サーバを貸し出すホスティングサービスに比べて)
  2. それで獲得したユーザ数を武器にOracleとかメジャーソフトベンダを抱き込んだ
  3. 自前でもBig Dataを扱うアプライアンスを提供してユーザを呼び込んだ

っていう感じである。

つまり、規模の経済と、仮想化による利用率の向上*3でもって値段を下げるのをとっかかりにうまいことやったのである。

Winner-take-all-market

この市場での競争は消耗戦になりがちだ。前述のとおり、Amazonは初期から参入している強みも活かして、今のところ市場のリーダポジションを確立している。とはいえ、これを維持するのはAmazonにも大変なようで、10Kによると昨年も1000億円ぐらいEC2に投資しているっぽい。GoogleとかMicrosoftの追い上げにあっている、という理由もありそう。

で、EC2ってInnovativeなの?

冒頭でもちょっと書いたが、Innovationって複数の評価軸があって、MITの先生の論だとそれは12個に分類できる。ので、その軸でばっくり(主観で)評価してみた。詳細を書き出すとスゴイ分量になるので省略するが、まぁ、こんなカタチのチャートが得られる。

チャートを見る限り、従来プラットフォーム(ホスティングサービス=物理サーバのレンタル)に比べると、かなりInnovativeと言えそう。

この中で、個人的に特に注目したいのはOrganization。なんたって、タイミングよく、しかも巨大な資本を投下してマーケットに参入し、Big Dataという流れにもうまくのり、かつ莫大な投資を継続している、というのは普通の経営組織じゃ難しいように思う。内部組織の情報はあんまり公開されてないっぽいので、これはもう想像するしかないんだけど、組織の中に、何か、特別な意思決定や戦略立案のヒミツがあるような気がしてならない。

最後にも一点。Amazonは今でもはっきりとEC2の売上とコスト、つまり利益がどれくらいかっていうデータを開示していない。これは注意深く見ておくとよいと思う。このマーケットは更に拡大していくっていう予測もあって*4、何となく未来は明るそうにも見えるんだけど、これが計画どおりなのか、というのは中の人にしか分からないのである。

*1:レポートの部分的な使い回しともいう

*2:もちろんこの部分のキャパシティプランニングは収益性の鍵の一つ

*3:普通のサーバって、ピーク時とそれ以外での利用率が全然ちがって、全時間で平均すると驚くほどコンピュータリソースって使われていない

*4:同業者の人はAmazonがなぜ東京にDCを立ててて、この拡大するマーケットに伴い縮小するのはどこか、というのを強く意識しておくとよいかもしれない